数日前の予報では雨ではありませんでしたが、さすが雨男、当日は見事に朝から雨が降ってしまい、スタートまでは震えながら号砲を待つことになってしまいました。
自分にとっては初めてのフルマラソンです。これまでハーフマラソンを経験したこともなく、練習でも最長距離が18kmと中途半端な距離で、体力的に自信を持てないまま迎えた大舞台です。本当はもう少し長い距離を練習したかったのですが、今年に入ってから右足の太ももから膝にかけての痛みが続き、満足に練習ができない状態が続いていました。走るたびに痛みが増し、2月に入ってからは2回しか練習できない状態でした。その間、スタッフのPT佐々木くんに何度かリハビリをお願いし、痛みを和らげてもらいました。レース前には痛み止めの薬も飲みましたが、それでも完走できるかどうか、不安な気持ちでのスタートとなりました。
【スタートから12km付近】
号砲から遅れること約10分、ようやくスタートラインを越えることができました。スタートラインを越えてからも人、人、人。足の痛みを確認する余裕もなく、人の波に乗るにつれていつの間にか気持ちよく走り出すことができました。5km、10km走っても足に痛みは感じません。予想していたよりスピードにも乗れていました。
いつもは深夜に一人だけで練習をしていたので、雰囲気の違いによってこれだけ身体の動きが違うのか、と驚きました。他のランナーの勢いもありましたが、何よりも沿道の応援の力を感じました。沿道から身を乗り出して声を掛けてくれたり、ハイタッチをしてくれたり。給水所ではボランティアさんも一生懸命応援してくれるのも感じました。
【12km付近】
ハートネットのスタッフも応援に駆け付けてくれました。事前に「12km付近の増上寺あたりにいます」と教えてくれていましたが、沿道を探しながら走っていたところ、OT谷本くんの顔が見えました。
「いたーっ!!」
慌てて駆け寄り、谷本くんとハイタッチすることができました。他のスタッフは気付いていない様子でしたが…。
当初の予定ではその後、すぐに銀座の方に移動すると聞いていましたが、品川からの折り返しでまた同じ道路を走るコースだったので、「もし待っていてくれたら嬉しいな~」などと思いながら走り続けていました。
【18km付近】
すると、18km付近でまた谷本くんの顔が見えました。予定を変更して反対車線に移動して待っていてくれていたんですね。今度は皆、気付いてくれて全員とハイタッチをすることができました。これがものすごく嬉しくて、本当にパワーをもらいました。
【20km付近】
「ここのトイレ空いてますよ~」とボランティアの方の声。急いでトイレに駆け込みましたが、ほとんど出ず。水分は十分すぎるほど摂っているのに、全て汗になっていたんですね。コースに戻るまで約2分間のタイムロス。他のトイレに比べるとかなり空いていましたが、このトイレ休憩が後々、大きく響いてくるんです…。
【20~25km】
ここからは自分にとっては全てが未知の世界です。レース前の不安に反して不思議と足に痛みは感じず、ペースも衰えずにしばらくは走ることができました。
ところが、ハーフの21km付近を通過して銀座4丁目の交差点を曲がった直後です。ここからは浅草までのコースで浅草寺雷門前で折り返し、また銀座4丁目まで戻ってこなくてはいけません。右手には既に折り返して走っているランナーが見えています。フッと反対車線に目を移したところ、「34km地点」という看板が目に入ってしまいました。
「ここからまだ10km以上か。辛いな~、足がもつかな~。あそこまで行ってもまだ残り8kmもあるんだな~」
と、急に弱気になってしまいました。10km以上というと1時間程度はかかる計算です。それでも25kmまでは5分/1km前後のペースを保てていました。
【25~34km】
走りながらも不安を振り払おうとしましたが、これまで経験したことのない距離に萎縮してしまいました。沿道を見ると、応援の方々がチョコや飴や果物など、いろいろなものを差し出してくれています。
「立ち止まって手を伸ばそう」という思いと「もう少し頑張ろう」という気持ちの葛藤が続きます。一旦、弱気になるとダメですね。ペースがガクンと落ちました。それでもなんとか雷門前の折り返しは通過して30kmまでは立ち止まることなく走り続けました。
しかし、ここでまた「あと12kmもあるのか」と、弱気になってしまったんですね~。
誘惑に勝てずに立ち止まってしまいました。沿道の方の差し入れのチョコやイチゴをいただきながら、ダラダラと走ったり歩いたり。
この頃にはもう握力がありませんでした。チョコの包み紙さえ手で開けられない状態です。エアーサロンパスを持っている方も大勢いました。自力ではノズルを押すことができずに、ふくらはぎを差し出すだけで精いっぱいです。それでも元気づけてくれながら振り掛けてくれます。
【35km付近】
沿道の方たちやボランティアの方たちの声援を受けながら、なんとか悪夢の34km地点を通過し、銀座4丁目をふたたび曲がることができました。そして35km付近。ハートネットのスタッフの顔が見えました。ヘロヘロになりながら、なんとか走ってハイタッチをしながら通過。また元気を貰いました。あとは何とか完走するだけです。
≪ 35km付近 パトレイバー像:ホントにメッセージの通りでした ≫
歩くだけでも完走は十分可能なところまでは来ていましたが、タイムを見るとそのままのペースを維持すれば、ネットタイム(スタート地点からのタイム)でサブ4(4時間以内での完走)も不可能ではない状況です。「ならばサブ4を目指さねば」と自分を奮い立たせます。しかし、ここからがキツイ。この後からアップダウンが始まるんです。
【35km~ゴール】
元気を貰ったはずなのに、35kmを過ぎると足が動いてくれません。
「10mってこんなに長かったっけ」
と、いうほど辛いんです。37kmを過ぎると「残り5km」の看板が出てきます。次の看板までが本当に遠く感じます。走っては歩き、歩いては走りと、まさに息も絶え絶えに前に進みます。
「腕を振って~! 腕を下げて大きく振ればまだ足は動くよ~!」
「辛いよ~!辛いけどあと少しだから頑張って~!」
など、沿道の方の力強い声援に後押しされ、気持ちは奮い立つものの、身体が動いてくれない。フルマラソンの過酷さを実感しました。
「残り2km」の看板。サブ4まで残り13分程度。まだ望みはあります。なんとか走る配分を多くして最後の力を振り絞りました。最後のコーナーを曲がった瞬間、大きなゲートが目に飛び込んできました。
「ゴールだ!! 間に合った!!」
と思ったのも束の間、ゲートには「ラスト195m」との表示…。まだ42km地点だったんです。タイムを見ると、4時間まで残り10秒程度…。さすがに195mを10秒で走る力は持っていません。かろうじてゴールに辿りつくのが精一杯でした。
42.195kmのうち、0.195kmというのは単なる端数程度と思っていましたが、こんなにも大きな壁に感じるとは…。
結果は4時間1分台。ギリギリでサブ4には届きませんでした。ここで頭をよぎったのが、あの「トイレ休憩」です。あれがなければもしかしたら…。
まあ、考えても終わってしまったものは仕方ない。全力を出し尽くしたのは事実です。
自分の力が足りなかっただけ。
≪ 注:画像は昨年のものですphoto by 矢野 ≫
それでも残念な気持ちよりも完走できたという達成感の方がはるかに大きいものでした。ゴール後も完走者しか手にすることのできない「FINISHER」のプリントの入ったバスタオルやメダルを掛けていただき、嬉しさがこみあげてきました。
不安だらけのスタート前のことを考えると、完走できた喜びはたとえようがありません。
というのが走り終えたあとの感想です。走っている間、応援に来てくれたハートネットのスタッフ、沿道の方やボランティアの方の声援、どこかで同じように歯を食いしばりながら走っているであろう小野寺
くん、箱根駅伝や多数のフルマラソン、トライアスロン経験者で数多くのアドバイスをいただいたH様、自宅でテレビを観ながら一生懸命自分の姿を探してくれている利用者様やハートネットのスタッフなど、多くの見えない力が背中を押し続けてくれました。皆様に感謝いたします。
大会名(Race name):東京マラソン2015
開催日(Date):2015/2/22
ナンバー(Bib number):32531
氏名(Name):杉浦 潤平
種目(Category):マラソン男子
地点名 | スプリット (ネットタイム) | ラップ | 通過時刻 |
5km | 00:35:23 (0:25:49) | 0:25:49 | 09:45:24 |
10km | 01:01:02 (0:51:28) | 0:25:39 | 10:11:03 |
15km | 01:27:19 (1:17:45) | 0:26:17 | 10:37:20 |
20km | 01:52:51 (1:43:17) | 0:25:32 | 11:02:52 |
25km | 02:19:18 (2:09:44) | 0:26:27 | 11:29:19 |
30km | 02:48:57 (2:39:23) | 0:29:39 | 11:58:58 |
35km | 03:22:07 (3:12:33) | 0:33:10 | 12:32:08 |
40km | 03:56:17 (3:46:43) | 0:34:10 | 13:06:18 |
Finish | 04:10:47 (4:01:13) | 0:14:30 | 13:20:48 |
杉浦
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